「ジブリみたいな美容室」の特徴と魅力を徹底解説!憧れの内装を実現するには?

『魔女の宅急便』より(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

皆が憧れる「ジブリみたいなインテリア」ってどんなもの?

『魔女の宅急便』に登場するぐーちょきぱん店、
『となりのトトロ』に登場する「さつきとメイの家」
『耳をすませば』に登場する「地球屋」
『思い出のマーニー』に登場する「大岩家」

日本が誇るアニメスタジオ『スタジオジブリ』が生み出してきた数々のアニメーションには、魅力的なキャラクターやストーリーはもちろん、それらを引き立てる雰囲気たっぷりの建物やインテリアが登場します。
ジブリに登場する空間はどれもこれも、どこか非日常でありながら懐かしく、異国の情緒と日本の原風景を取り合わせたような独特の空気をまとったものばかり。

そのため、内装会社やインテリアデザイナーのもとには、しばし「ジブリのような家」「ジブリのような内装」という依頼が持ち込まれることもあります。

そこでこの記事ではそんな「ジブリっぽさ」の正体を、映画中のワンシーンを交えながら紹介していきたいと思います。
(使用する画像は、2020年9月よりスタジオジブリ公式サイトにて開放された提供画像を用いております)

ちなみに、本記事の外観編は、下記の記事でまとめております。
ご興味がありましたらこちらの記事も御覧ください。

「ジブリが描く内装」の持つ3つの特徴

『借りぐらしのアリエッティ』より、アリエッティの部屋
(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

一口に「ジブリの家」といえども、作中で描かれる家や施設は洋の東西も時代設定も様々で、貧しいながらも豊かさを感じるこじんまりとしたものから大豪邸までさまざまと言えるでしょう。
しかしジブリが描く空間は、多様な時代や国籍のものでありながらいずれも独特の雰囲気や魅力を持っており、そこには共通する哲学やルールのようなものを感じさせます。

そんなルールの中でも、現代日本に暮らす我々が取り入れることができる「コツ」のようなものが、いくつか存在します。

  • 天井照明を使わない
  • ②壁紙・ファブリックは「大胆な色や柄」を取り入れる
  • ③家具・建具は「素材感」を意識する

以下一つずつ見ていきましょう。

①天井照明を使わない

ジブリに登場するインテリア真似する上でもっとも重要かつ手軽なのが、この「照明」による空間のコントロールです。
というのも、ジブリに登場する部屋や店舗と現実のインテリアがもつ最も大きな差異が、この「照明」にあるためです。

現代人である我々にとって最も馴染み深い照明は、下記の画像にあるような天井照明(シーリングライトやダウンライト)です。

天井照明(画像出処:photoAC)

どこの家でも当たり前のように採用されているこの天井照明という照明様式は、部屋の狭い日本では効率的な採光方法であることからため、戦後の高度経済成長とともに数多くの家庭に導入されてきました。
しかし、ペンダントライトやデスクライトと比較したとき、「天井に貼り付けた蛍光灯一つで、部屋全体をのっぺりと照らす」というこの明かりの確保の仕方は、懐かしさや温かみといった印象からは遠い照明方法となってしまいます。

代わりにジブリ作品に登場する空間が取り入れているのが「複数の照明器具」と「自然採光」の活用です。

『魔女の宅急便』より、キキの実家(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

例えば『魔女の宅急便』に登場するこちらのワンシーン。
これから旅立ちを迎える主人公の自室には、天井からのペンダントライトとデスクライト、さらに2つの窓が確認できます。

『魔女の宅急便』より、キキの実家(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

加えて、さっきの部屋を別の角度から描いたシーンでは、(キキに隠れて見えにくいですが)ブラケットライトも確認できます。

また『思い出のマーニー』に登場した大岩家も、全く同様です。

『思い出のマーニー』より、大岩家二階(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

これはジブリ作品のみならずインテリアの教科書にも掲載されている重要なポイントですが、照明器具というのは歴史的に見れば行灯や提灯のように「必要な部分を必要な量だけ照らす」ものが主流でした。
そのため、天井から一様に空間を照らす明かりの取り方は必然的に「現代っぽさ」「人工物感」を醸し出してしまい、ジブリ作品が持つ温かみを表現しにくくなってしまう傾向にあるのです。

『耳をすませば』より、聖司のアトリエ(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)
部屋全体を照らさないことが、空間に和らぎを与えている。

美容室内装でジブリっぽい照明にするポイントは?

美容室に必要な明るさとは?

法律上、美容室で必要な光量は100ルクス以上と定められています。これは天井照明を使わなくてもクリアできるでしょう。しかし、カラーの色をきちんと確認するには、外(曇天〜晴天)と同程度の光量(1,000ルクス程度)が必要です。これは、かなり明るいため、ポイントを抑える必要があります。

●全体を照らさず、スポットで照らそう!

一番簡単なのは、窓の多い物件を選ぶこと。ただし、雨で外が暗い日や夜にカラーをすることも多いでしょう。そういった場合に備えて、ペンダントライト・スポットライトを使用して、鏡やお客さんの周辺のみを照らす工夫をしましょう。店舗全体を照らさずに、鏡やお客さんの周辺のみで必要な光量を確保することが、「ジブリっぽい照明」を演出することができます。

●色は「電球色」か「昼白色」を選ぼう!

電球には色があります。一般的に市販されているのは、①電球色、②昼白色、③昼光色、です。①電球色が最もジブリのような色味を出せますが、黄色が強いので、カラーの色が外と中で違って見えてしまう可能性があります。

カラーの色味・質感を正しく判断する必要がある場所には②昼白色を使用し、それ以外の場所では①電球色を使用するのが、美容室内装で「ジブリっぽい」演出を行うための最善策と言えるでしょう。


②壁紙・ファブリックは「大胆な色と柄」を取り入れる

次に注目したいのが、壁紙やカーテン、クッションなどに取り入れられた大胆で派手な色使いです。
「懐かしさ」や「日本の原風景」といったイメージで語られることの多いジブリ作品ですが、映像をよくよく見てみるとかなり大胆でビビッドな色使いをしていることに気がつくでしょう。

最も代表的なのは、『ハウルの動く城』の「ハウルの部屋」や、『借りぐらしのアリエッティ』に出てくる「アリエッティの部屋」に登場したような、ファンタジックで非現実的な空間です。

ただしここで注目してほしいのは、ジブリ作品に登場する「部屋」は、ファンタジックで幻想的な部屋でなかったとしても、非常に豊かな色遣いをしているという点です。


例えばハウルとアリエッティにおいて「日常的」「現実的」な空間として描かれている「ソフィーの帽子屋」や「翔の部屋」を御覧ください。

どちらも「簡素だけれども豊か」であり、ファンタジー要素がなくとも十分「ジブリらしい空間」という印象を感じます。



あるいは、先程取り上げた「キキの部屋」と「大岩家」をもう一度見返してみましょう。

こちらも改めて見ると、一つ一つの家具や小物はシンプルながら、壁紙やカーペット、シーツに枕カバー、カーテンやクッションといった「布」まわりに、想像以上に多様な色と柄が取り入れられていることに気がつくでしょう。

このようにジブリに登場する部屋は、いずれもオレンジやピンクやエメラルドグリーンやのようなかなり目立つ色を取り入れた鮮やかな空間であることがわかります。
現代のインテリアの教科書には「色数を抑えること」がオシャレな空間の特徴として挙げられていることを考えれば、これはインテリアの定番と逆光した「ジブリインテリアの大きな特徴」と言えるでしょう。

ところで、これほど多様で派手な色や柄を採用しているにもかかわらず、なぜジブリに登場する部屋は「どこか落ち着いた感じ」がするのでしょうか?
そこには2つのポイントがあります。

一つは、前述の「照明」の問題があります。
現代の「明るく純粋で一様に光を浴びせる」白色蛍光灯のもとでは、壁紙やカーペットの色がそのまま目に飛び込んで来ることとなり、鮮やかな色味が人工的な印象を強調する結果に陥ります。
しかし太陽光や間接照明を用いた空間では、光そのものに若干色味がついていることが多い上に、反射光や拡散光が複雑に陰影を作ります。
そのため、部屋にさまざまな色彩・明度・彩度の布製品を取り入れたとしても、複数の光源からの色が重なり合い全体が統一された印象になりやすいのです。

美容室内装でジブリっぽい「柄」使いのポイントは?

●ファブリックは薬剤のつかない場所に使用する

『思い出のマーニー』より、大岩家二階(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

ジブリっぽさを出すためには、「柄」の入ったファブリックは欠かせません。しかし、美容室内装において、布はとても汚れやすく、相性の悪い素材と言えます。

カーペット・クッション・カーテンなどを使用したい際は、セット面から1.5m以上離れた場所に使用するようにしましょう。他にも、布地をFRP(汚れや水に強い加工の手法)で加工したり、PVC素材を使用してオリジナルのファブリックを製作する方法もありますので、信頼できるデザイナーに相談しましょう。

●アンティーク小物をたくさん配置する

『ハウルの動く城』より、ソフィーの帽子屋(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

柄の入ったファブリックを使用しなくても、アンティークの小物で覆い尽くすことで、「柄」と同じ役割を担うことができます。しかし、アンティーク小物は高く、偽物を使ったり、小物同士の配置や色の組み合わせが美しくないと、チープな印象になってしまうこともあるため、信頼できるデザイナーによく相談してみましょう。

●色を調色してもらおう!

ジブリに登場する空間では、多くの色が使用されます。多くの色を使用した空間設計は、色の微妙な組み合せがとても難しく、ベテランのデザイナーでも苦労することがあるほどです。既製の塗料では、絶妙な色合いを出すことは難しいですから、色作り(調色)を自分でできるデザイナーを探すと、ジブリのような雰囲気で、且つ美しい美容室空間作りが、成功する確率はかなり高まるでしょう。

③家具・建具は「素材感」を意識する

前項で紹介した通り、ジブリに登場する邸宅や店舗では、実に色とりどりの布が用いられていることがわかりました。
一方でそれ以外の部分、すなわち家具・建具・床板・構造材・小物などに目を向けると、「木や金属や石などの天然素材」を「なるべく多くの種類で」かつ「なるべく塗装・化粧することなくそのまま」用いていることに気が付きます。

『『千と千尋の神隠し』より、銭婆の家(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

例えばこちらの画像は、『千と千尋の神隠し』に登場する「銭婆の家」。
画面手前のケーキやティーセットに目が行きがちですが、ここで注目したいのはそれらを並べる机やキャラクターの座る椅子、あるいは画面奥の食器棚やロッキングチェアー、そして床板などの木材が用いられている部分です。
いずれも木製の家具なのですが、その木材の色合いや艶や木目の粗密具合がバラバラに描写されており、一つの画面に多様な材質の木が取り入れられているのがわかります。
また、画面右奥の緑色の戸棚を除けば、いずれも木材そのままの風合いを残した仕上げである点も特徴です。

異なる木材がうまく取り入れられているのは、床や壁、家具だけではありません。
作り付けの戸棚や机、あるいは扉や窓枠といった建具にも複数の木材が使われており、この「つぎはぎ」感がある種の「人が生活してきた」という手触り生み出しています。

通常のアニメでは、ここまで木材の表現にこだわった背景表現はなかなか見られません。
こうした多様な木材の利用は、ジブリ作品に描かれる建築物の大きな特徴となっています。

『思い出のマーニー』より、大岩家二階(画像出処:https://www.ghibli.jp/works/)

また、この木材の使い方に、「なぜジブリの部屋は派手な色なのに落ち着いているのか?」という問いを投げましたが、その答えもここにあります。

すでに本記事で複数回引用している「大岩家」の内装をもう一度見てみましょう。
前項にて「派手な色遣い」をしていると表現したこの部屋ですが、そのカラフルさを担っているのはカーテンやカーペットといったファブリック類と、いくつかの小物であり、家具や建具、床や天井に使われている木材は素材そのままの風合いを残している点に気が付きます。
ジブリに描かれる空間が「カラフルなのに落ち着いて見える」という要素のもう一つの原因は、この「建物は素材そのままに、そこにインストールする壁紙・ファブリック・小物はカラフルに」という原則を守っている点にあるといえるでしょう。

ただしここで問題になるのが、「多種多様な木材を取り入れる」ということが、美容室の内装では非常に難しいという点にあります。
これから「戦前戦後の木造住宅をリノベーションして美容室を開業する」という人ならいざしらず、大抵の人は鉄筋コンクリート造の店舗を借りるはずですし、窓枠も99%の人がアルミサッシを採用しているかと思います。
あるいは家具や雑貨も、当然プラスチックをさけて「本物の素材・自然にある素材」を使ったほうが好ましいのですが、現実としては予算的な理由からプラスチックやイミテーション素材を使わざるを得ないこともあるでしょう。

美容室内装で「本物の素材」を取り入れるためのポイントは?

●木材はエイジング加工する

木材は、パーマ剤やカラー剤が付着するとシミになってしまいます。ウレタン加工など、シミにならない加工方法もありますが、使用する素材全てに実施すると、かなり高価になってしまいます。そこでおすすめなのが、「エイジング加工してしまう」という方法。

エイジング加工とは、新しい材料をわざと古い材料のように加工することです。ジブリのように「昔からあるような」「味のある」空間を演出するには良い手法である上、職人の腕さえ良ければいいので低コスト。また、美容室として運営していく中でついた薬剤や汚れも、「エイジングの一部」として目立ちません。美容室内装にはもってこいの手法なのです。

●コストを抑えたい。本物の素材を使用するべき場所って?

まず、お客様の目線から、1.5m以内の場所(具体的には下記)は、本物の素材を使います。

逆に、天井・カウンターの後ろの壁・バックヤードなど、お客様の目線から1.5m以上離れた場所は、コストを抑えた素材(塗装仕上げなど)を使用することでコストを抑えます。それでも予算が厳しい場合は、1.5mを1mに狭めると良いでしょう。客席の床などをローコストな素材で仕上げる選択肢が出てきます。

まとめ

この記事では、ジブリ作品に登場する住宅や店舗を比較分析することで、「ジブリっぽい」内装の特徴を整理しました。また、それを美容室内装に生かす方法も、デザイナーが自ら解説しています。

本記事の要約

  • 天井照明を使わない(店舗全体を照らさない)
    • ペンダントライトやスポットライトで、お客さんをピンポイントで照らす
    • 照明は「電球色」か「昼白色」を選ぼう!
  • 壁紙・ファブリックは「大胆な色と柄」を取り入れる
    • ファブリックは薬剤のつかない場所に使用する
    • アンティーク小物をたくさん配置する
    • 色を調色してもらおう!
  • 家具・建具は「素材感」を意識して
    • 木材はエイジング加工しよう
    • 本物の素材を使用する場所は、お客さんの目線から1m〜1.5m以内の場所に絞る

これらの特徴を抑えることで、鮮やかな色味と落ち着いた風合いを持ちながら、どこか統一感のある「ジブリっぽい内装・インテリア」に近づけることでしょう。
今、ジブリっぽい美容室をご検討のお客様は、ぜひこの3点を意識して内装を計画してみてください。


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