美容室の物件選びはどこを見る?契約前に絶対にチェックしておきたいポイントと注意点

今日は美容室を開くための物件を見て回ったんだけど、
テナント選びってどこに注目すればいいのかしら?

店舗物件選びは、普通の引っ越し以上に難しいものね

美容師の方の中には、「いずれは自分のお店を持ちたい」という目標を掲げる方も多いのではないでしょうか?
中には単に夢見るだけでなく、資金集めを勧めていたり、内装のイメージを膨らませてみたり、経営計画を練る段階まで勧めている方もいるかも知れません。

そんな美容師としての独立について、いざ開業に向けて動き始めた時に悩むポイントの1つが「どんな物件に店を構えるか?」というポイントでしょう。
今回は、美容室用の物件を探すにあたり知っておくべき、不動産やテナントを探し契約する際の注意するポイントなどについてお伝えします。

まずは大雑把なエリアを決める

物件を探すにあたってまず検討しなければならないのは、物件を構えたいエリアや地域、最寄り駅をある程度固定することです。

なぜなら、物件探しのためには不動産屋への依頼が必須であり、その不動産屋は駅や路線を軸に物件を扱っているからである。
一人暮らしや引っ越しを経験したことがある方ならご存知かと思いますが、不動産会社は拠点としている場所から遠く離れた案件の紹介はほとんどしてくれません。(都心部ほどこの傾向は強い)

つまり物件探しは、まず「出店エリアの決定」を行い、その後「不動産屋選び」→「物件選び」という流れを取るのです。
出店エリアの決め方・調査方法については、下記の記事に紹介しておりますので、ぜひ御覧ください。

よってこの記事では、すでにお店を出すエリアやその立地の目処が立っていることを前提に解説していきたいと思います.

不動産屋に依頼して、物件探し

出店を検討しているエリアが決まった段階で、最寄り駅の不動産屋に相談に行きましょう。
不動産屋の選び方についてですが、基本的には

  1. ネットの店舗用不動産情報サイトで、自分の求める物件や理想に近い物件を検索し、いくつかピックアップ。
  2. それぞれの物件を所有・管理している不動産会社に、現在の入居状況と「これに近い物件はありませんか?」とメールで相談
  3. 返信が届いた中で、一番対応が丁寧で誠実な会社を選ぶ。
    (こちらの質問にろくに答えず、「電話しましょう」「会いましょう」といってくる不動産会社は避けるのがベター)

という形で選ぶのが一般的かと思います。
不動産屋を訪れたら、改めて造りたい店の方針を伝え、条件に合う物件の紹介と内見(現地見学)をお願いします。

この時、

  • 具体的にどんな条件を伝えるといいのか?
  • それぞれの物件を訪ねた時、どこを見るべきなのか?
  • 契約の際、どんなポイントを注意すべきなのか?

といった点を予め整理しておくと、後々のトラブルをかなり回避できるでしょう。

ポイント1|集客性・雰囲気

物件を選ぶ上でやはりもっとも気になるのは、お客さんがアクセスしやすい「集客性」やその建物・土地がもつ「雰囲気」でしょう。
一般には、駅前や目抜き通りのように人の往来が激しいエリアで、1階の路面店を確保したほうが、集客力が高いとされています。

しかし現代では「店の前をフラっと通ったときに、気になったから入店」というお客様は少なく、相対的にこうした立地の重要性は薄れていると言えるでしょう。
美容室での体験や口コミ、オンライン予約サイトの印象やSNSの活用などが集客のメインウェポンとなりつつある現代において、こういった「家賃の高い」「競合の多い」「にぎやかな」場所に出店するのが常に最善か?を考えると、必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか?

そのため、物件選びの段階ではむしろ「減点要素となる部分」を意識するという考え方もあります。
すなわち

  • 初来店のとき、お客さんが道に迷ったり出入り口を誤認する要素はないか?
  • 想定顧客の生活圏から、極端に遠い立地ではないか?
  • 顧客の奪い合いになる類似店が、隣や真向かいなどにないか?
  • 建物の周囲や同じビル内に、店のイメージダウンになる施設や店舗はないか?

など、極端に集客を阻害する要素がなければOKというマインドで物件を選ぶということです。
なにより美容室選びにおいては、後述するような「契約内容」「設備・インフラ」「法令・防災」といった条件のほうが、決定打になりやすい要因ですから、必ずしも駅前や一等地に固執する必要はないとも言えるでしょう。

ポイント2 契約内容

STEP:1  物件・融資の申請と契約(2ヶ月〜6ヶ月)

次に気になるのは、物件契約時の賃料や契約条件についてです。
賃貸契約書には専門知識がないとわからないことがたくさんあり、場合によっては時間や手間やお金を大きく損失するトラブルを招きかねません。

もっとも重要となるのは、やはり契約時の初期費用でしょう。

  • 仲介手数料:不動産屋への支払い。月額賃料の約半月分程度が目安。
  • 店舗保証金(敷金):家賃滞納や退去時の損傷復旧にあてられる預り金。退去時に返却するのが原則。
  • 礼金:オーナーへの支払い。
  • 保証料:連帯保証人などがいない場合、保証会社へ依頼する際に必要な価格。

契約書にはこれらの用語を見つけたら、それぞれ「いつ」「誰に」「いくら」支払うお金なのか、という視点で確認することが求められます。
またこれらの金額に合わせて、「クリーニング費」「修繕費」「〇〇安心保証プラン」などの名目で、さまざまな費用を請求されるケースが多いです。
(これらの費用は交渉しだいでは免除してもらえることもありますが、普通はあれこれ理由をつけて請求してきます。)

また、トラブルの原因となりがちな特約・注意事項としては、

  • 普通借家と定期借家
  • 原状回復と修繕費用の詳細

の2つが挙げられます。

一般の借家契約は、借り手(つまりあなた)を保護するために、貸し主は正当事由がない限り契約の更新を拒絶できません。
これに対し定期借家契約とは、一定期間の契約期間を満了した段階で賃貸借が終了し、契約を再更新するかしないかを両者で決め直すことができる契約です。
例えば契約期間が3年で定期借家契約を行った場合、あなたが内外装の補修を行った物件であろうが、3年後に経営がどれほど順調であろうが、物件オーナーが「出てほしい」といえば退去しなければなりません。
(主に空き家活用やシェアハウスの現場でよく見る制度です。町家を改造した店舗などを考えている人は、特に注意が必要です。)

また、原状回復とは退去時に店舗を契約前の状態に戻すことをいいます。
具体的には、内外装の補修を行った場合や新しい設備を据え付けた場合、退去時にそれらをすべて取り外して置かなければならないという内容です。
どのレベルまで内装を復元しなければならないのか、その費用は誰がどこまで負担するのか、といった点は、契約書の「特約」欄に記載されていることが多いため、注意が必要です。

どちらのポイントも、通常は契約の際に不動産会社から説明が義務付けられているため、(よほどの悪徳不動産でなければ)何も知らないまま契約を結ばされるということはまずありません。
しかし「物件選び」の段階でいいと思った物件が、契約直前の段階で「定期借家契約」や「原状復帰必須」のテナントであることがわかり、大きく予定が狂ったというケースは十分に想定できる事態です。

ポイント3 設備・インフラ

店を1から新築するのではなく既存テナントを利用しての出店の場合、店選びの障害となりやすくかつトラブルの原因にもなりやすいのは、この「設備・インフラ」面での制限です。
美容室は通常のサービス業に比べて「電気・上下水道・ガス」などをたくさん利用する業種であり、十分な設備容量を満たしていない物件はどれほど魅力的でも候補として採用できません
具体的には、以下のようなポイントに気をつける必要があります。

  • 上水道管の口径と水圧:シャンプー台の水量や台数に影響。
  • 排水管の口径:水漏れや浸水被害の主要原因。
  • 電気容量:同時に利用できるドライヤー・スチーマー・デジタルパーマ機の量に影響。また、空調機器用の電力も対応しているか要確認。
  • ガス:プロパンガスの場合、ランニングコスト増。都市ガスの場合も、容量が足りているか要確認。
  • 屋外機器:給湯機器のボイラーやエアコン室外機などの設置スペースの有無。

これらの中には、追加費用を払えばなんとかなるケースもありますが、どう頑張っても拡張・修繕・事後対応がむりな物件もあり、契約前の確認が極めて重要なポイントとなります。

もちろんこれらの内容は、建築・設備の素人であるあなたが一人で判断することは難しく、かつ美容室開業の門外漢である不動産会社にも、十分な知識がないケースがほとんどです。
「かつて美容室として利用していた物件を、居抜きでほぼそのまま継承」などの特別なケースを除けば、後述するように専門家立ち会いのもとでの内見は必須と言えるでしょう。

ポイント4 法令・防災

最期に、設備周りと同じくらい素人の判断が困難なポイントとして、その物件が建つ土地の法律や条例、行政による防災上の指示の確認があります。

  • 都市計画法に基づく用途制限
  • その他景観条例など
  • ハザードマップ

こういった目に見えない障害についても、専門家(建築家や不動産会社)の調査や指示を仰ぐ必要があります。

契約前には、専門家を交えた綿密な打ち合わせを

ここまで紹介したとおり、物件選びは素人が見ただけではわからない条件が多数存在しています。
そのため、一見理想的な物件が見つかったとしても、その場で即決するのはまだ早いといえるでしょう。
商業施設の物件選びでは、トラブルを避けるためには、契約の前に一度設計や施工の専門家による立ち会いを必ず依頼する必要があります。

もしかしたら「人気の物件なので、早く契約しないと売れてしまう」と不安に思う方もいるかも知れません。
しかし、契約や融資を行う前に、見積り・平面図の作成をデザイン・施工業者に依頼し、希望通りの店舗が実現できるかどうか確認する作業は、店舗物件の選定では必須の手順であり、ここを省くと大きなトラブルのもととなります。

物件探しから契約までの手順については、こちらの記事でも解説しておりますので、ぜひ御覧ください。

まとめ

以上、美容室の物件を決める上で必要となる基礎知識を紹介しました。

本記事の要約

  • 物件探しの前に、まずは出店の大まかなエリアを決める
  • 物件を決めるときは「集客性・雰囲気」「契約内容」「設備・インフラ」「法令・防災」をチェック
  • 物件契約前には、必ず内装業者による立ち会い・見積もり・平面図の作成を済ませる

記事内でも書いたことですが、もし内装業者への相談をしないまま不動産会社を訪問しようと考えているのであれば、まずは内装業者との打ち合わせを強くおすすめしたいと思います。
ぜひこのブログを運営する設計事務所studio.sumutoco(スタジオすむとこ)へ、ぜひお気軽にお問い合わせください。
設備・構造・法律上の問題点を指摘するのはもちろん、その土地やあなたのコンセプトに即した、あなただけの内装デザインを実現してみせます!