【メリット・デメリット】あなたが「個室」美容室を開業する理由
最近、個室の美容院が増えてるって本当?
新しい美容室の形として、今とっても人気なんだよ!
多くの理髪店や美容室の場合,待合スペースや作業スペース、洗髪スペースがパーテーションなどで区切られているのは目にしますが、基本的には一つの大きな空間を間仕切りなしで利用するのが一般的。
しかし近年では、居酒屋やエステサロンのように、お客様一人一人のスペースに壁をたてて区切るという「個室型ヘアサロン」が、人気を集めています。
では、個室タイプの美容室がもつメリットやデメリットとは、一体どのようなものがあるのでしょうか?
また、個室美容室を開業する上での、設計や内装上の注意点は、どこにあるのでしょうか?
個室美容室が、今お客様に人気の理由
まずは、個室美容室がお客様に人気の理由から見ていきましょう!
そもそも、なぜ今個室美容室が人気なのでしょうか?そこには、お客様に喜ばれるだけの様々な理由があります。
以下、その理由を確認していきましょう。
プライバシーが守られる
個室美容室が人気である最大の理由は、なんと言ってもこの「プライバシー」の問題です。
一般的なヘアサロンは大抵鏡の張られた壁にむかって椅子が配置されており、他のお客さんと近い距離で横並びになって施術を受けます。
加えて美容室の中には、ガラス張りで外から中の様子がはっきりうかがえるような外装のものが多く見受けられます。
こうした美容室の設計は、一見当たり前のものとして普及しています。
しかし施術を受けるお客さん立場からすると、自分の髪の希望を他の人に聞かれてしまったり、髪を上げた無防備な横顔や寝顔を見られている気がして、どうにも落ち着かないのではないでしょうか?
こうしたお客様の「なんとなく恥ずかしい」という潜在的な悩みを受け止めているのが、昨今の個室ヘアサロンブームの最大の理由と考えられています。
子連れでも安心
また、小さなお子さんをお連れのお客様にとって、ベビーカー歓迎・子連れOKの個室美容室は救世主のような存在です。
泣いてもすぐにあやすことができますし、扉を閉め切ることができる個室であれば授乳もしやすくなるでしょう。
他のお客さんから白い目で見られることもなくなるため、個室を持っている美容室は子育て中のお客様からも高い人気を誇っています。
個室美容室は経営上不利?
このように、個室美容室であることは利用者にとってメリットが多いことがわかります。
確かに、「個室でなければ行きたくない」というお客様はたくさんいる一方、「個室の美容室は行きたくない」というお客様はちょっと想像しずらいですよね?
一部では個室での予約であっても追加料金なしで受けられる美容室もあるため、お客さんにとってデメリットがほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
でもそんなに人気なのに、どうして個室美容室は少ないの?
それはね、個室のある美容室にもデメリットがあるからなの……
以下、個室美容室を運営する際に気をつけなければならない、そのデメリットご紹介したいと思います。
デメリット1:内装工事の費用と工期が増える
美容室に個室を設ける第一の問題点は、内装に必要な工数や材料が増える点です。
個室化したサロンは、当然一体型の美容室に比べて建てる壁の量が多くなるため、必然的に設計や施工の手間が増えてしまうことが原因です。
内装にこだわりを発揮できる部位が増えるという意味ではメリットとなる個室化ですが、いいかえればそれは「設計しなければならない壁面がふえる」という意味でもあるのです。
また美容室の営業施設は、美容師法や各地方自治体の条例で定められた施設基準に則って設計する必要があります。
そのため、設計に際してはその面積や内装材の防火・耐火性能、個室ごとの設備に条件が課せられることから、相場以上の思わぬ出費が必要になる点にも注意が必要です。
デメリット2:回転率が悪くなる
美容室を個室化する2つめのデメリットは、店舗面積あたりの客席数が少なくなることから、収益が減ってしまう点です。
上述の通り、店舗内に内壁を設けた場合、各個室には最低限確保すべき面積の規制がかかることがほとんどです。
その上個室美容室は居心地が良いことから、通常の美容室に比べてお客様の滞在時間が延びることが予想されます。
これらの理由から美容室に個室を増やすと言うことは、1日あたりに担当できる顧客数を減らさざるをえず、売り上げの維持が難しいと考えられているのです。
デメリット3:店員同士の連携が難しい
個室化した際の3つ目の問題点は、店員同士の意思疎通が制限される点です。
個室化のメリットである「お客様同士の視線や声が交わらない」という点は、そのまま店員同士の声掛けやアイコンタクトの難易度を高めることの裏返しとなります。
特に難易度があがるのは新人スタイリストの教育でしょう。
先輩美容師がどのようにスタイリングをし、どのようにお客様とコミュニケーションをとっているかという姿を見ることは、新人が一人前の美容師になる上では不可欠な成長要素です。
しかし座席の一部(もしくは全部)が個室となった美容室では、そうした「見稽古」がうまく機能しなくなります。
それでも個室美容室が増えている理由
このように店舗に間仕切りを設けることは、初期投資もかかる上に毎日の売り上げが下がってしまう恐れもあることから、一般に経営上は不利な側面があります。
そのため、従来の価値観では個室化は倦厭される傾向にありました。
でもね、個室美容室にはメリットも多いんだよね?
そうよ。だからこそ、美容室の個室化が一つのブームになっているの。
では、そのメリットとは何なのでしょうか?
メリット1:内装が他の店との差別化になる
個室化することの最大のメリットは、なんといっても他の店との差別化でしょう。
一般に美容室は固定客となりやすく、新規客を確保するのは非常に難しいとされています。
もしこれからあなたが店を構える際、個室美容室の乏しい地域にあなただけ個室を持つ美容室を出店したとすれば、他店からお客を持ってこれるほどの強い差別化となることは間違い無いでしょう。
加えて、間仕切りの壁が多いと言うことは、(費用はかかりますが)内装デザインによってコンセプトを表現する幅も広がることを意味しています。
上記の点からも、個室を持つ美容室はお客さんの確保に非常に有利であること言えるのではないでしょうか?
メリット2:お客様の本音をヒアリングしやすい空間作り
美容室でお客様の要望を適切にカウンセリングのは、特に新規のお客様の場合は非常に難しいです。
「女優の〇〇さんのイメージでお願いします」
「この写真のヘアスタイルにしてもらえますか?」
といった形でわかりやすくイメージを伝えてくれるお客様は意外に少なく、照れや恥ずかしさが邪魔をしてうまく髪型の希望を喋れないお客様も多いのではないでしょうか?
しかし前述のお客様にとってのメリットでもお話しした通り、個室美容室はプライバシー上の安心感が強く、お客様の本音を聞き出しやすいのが特徴です。
他の美容室では躊躇いがちだったお客様が、個室美容室ではスムーズに要望を伝えることができたという声も多く、美容師としても腕を発揮しやすい環境と言えるでしょう。
結果お店全体の「居心地がいい」「対応が丁寧」といった評価にも繋がりやすいのです。
メリット3:薄利多売の経営を抜け出せる
個室を設けるということは、座席数を減らし回転率を下げるということを選ぶという意味します。
一見悪いことのように思えますが、これは見方を変えれば「美容師としての自分の安売りを止める」という宣言と捉えることも可能です。
実際のところ、個室のある美容室には下記のような点で経営上のメリットもたくさんあるのです。
- 快適さや高級感を理由に、客単価を上げやすい
- 整髪剤などの物販に有利
- シェアサロンや面貸しがしやすく、柔軟な経営が可能
たくさんのアシスタントを雇ってお客さんを効率的に捌く従来型の美容院経営を脱却するためには、一人一人のお客様に高い満足度を感じてもらう工夫や、アシスタントを雇わず身軽に立ち回るあり方が必要となります。
こうしたサロン経営の変化に対し、個室美容室という選択は非常に相性が良いのです。
メリット4:コロナ対策をアピールできる
最後に、コロナへの対策という側面も忘れられません。
美容室はその性質上、施術中はお客さんがマスクを外さねばならず、withコロナ社会の中では十分な対策が求められる店舗と言えるでしょう。
もちろん「十分な換気と清掃ができている」ことが前提となりますが、個室化はこれ以上ないソーシャルディスタンスの確保であり、これからの時代の美容院では主流となることが予想されます。
まとめ
本記事の要約
- 個室美容室はお客さんからの評価が高い!
- 個室美容室は初期費用も高く、回転率も悪くなりがち
- それでも個室美容室が増えているのは、差別化と柔軟な経営が求められるから
以上、個室を持つ美容室の特徴について紹介してきました。
厚生労働省の統計によると、日本の美容営業施設数は1997年から2017年までの20年で5万店も増加しており、その従事者数も2017年には52万人を数えました。
美容院経営は、まさに戦国時代ともいえる競争社会を迎えているのです。
一方で少子高齢化の影響もあり客数は減少傾向とされています。
同調査によれば平成27年度でのアンケートで、「客数の減少」を訴える美容院は8割にも登りました。
こうした「美容師の増加」と「客数の減少」という状況の変化を受け、内装の魅力やサービス面で勝負できる個室美容室のもつメリットが、近年徐々に評価され始めているのです。
しかし個室美容室には、費用や法律の面から、課題も多い点には注意が必要です。
また、「なぜ個室美容室を作りたいのか?」という根本の部分やコンセプトを具体的に検証しないまま、形だけ個室化・VIPルーム化しても、その恩恵を受けることはできません。
大切なのは、美容院を経営する上でのあなたなりの方針や目的意識を持つこと、そしてそれを実現するための綿密な検討・打ち合わせなのです。
コンセプトやあなたの思いを、実現可能な形として具体的にするためにも、ぜひプロの設計士に相談してください