【保存版】美容室の立地選び完全ガイド|集客・ターゲット層から考える成功の条件
美容室に限らず、店舗を構える上で訪れる最初の難題が「立地」でしょう。
人通りも多く駅からのアクセスが良好な土地に店を構えれば、お客さんの獲得には有利な反面、必然家賃も高いうえ競合店も多く、ランニングコストもかさみがちとなります。
またそれぞれの街には、土地柄や住人の層というものが存在します。
うっかり顧客ターゲットを読みそこねた場所に出店してしまうと、本来獲得できたはずのお客さんを逃してしまったり、あなたのお店を求めるお客様の目に届かなくなってしまう恐れもあります。
さらに集客面とは異なる問題として、法令や防災といった広い視座で土地を見る視点も求められていると言えるでしょう。
この記事では、美容院を出店する上での段取りや注意点、お店のコンセプトに応じた街選びのコツなどを解説します。
美容室立地選びの重要性|“どこでやるか”が成功を分ける

言うまでもなく、美容院経営ではリピーターの確保が重要な問題となります。
そしてリピーター確保を考える場合、「お客様の生活圏内・徒歩圏内に店がある」ということは、非常に重要な要素となるでしょう。
そして人は自分が住む家を決める時、平日に訪れる「学校」や「職場」、そして休日の行動を元に逆算して住む街や最寄り駅を決めています。
そのため、同じ生活習慣を持つ人間は比較的同じ駅の周辺に住まいを構えるという「傾向」が生じます。
こうした、狙ったターゲット層が多く住む街を正確に分析できれば、リピーターの確保においてこの上ない武器となることでしょう。
よって出店エリアを決めるためには
- ターゲットとなる顧客層を想像する
- 出店候補エリアに住んでいる住人層を分析する
の2つの手順をとり、その2つが合致している場所を選ぶ必要があると言えます。
ここでは、「誰に向けた美容室なのか?」というターゲット像の明確化と、「その人たちが日常的に通るエリアなのか?」とから、商圏分析の方法をご紹介していきます。
ステップ1:ターゲット層を明確にする

美容室経営において「ターゲット層をイメージ」となると、しばし持ち出されるのが下記のような分析です。
「20代後半の会社員で、仕事はクリエイティブ系。
社会人としての身だしなみを逸脱しない範囲で、自分らしさをアピールしたい女性」
このような、社会的な属性や趣味嗜好の細かい分析は、店の大まかな雰囲気や内装、スタイリングの方針を定める上ではありかもしれません。
しかしこのような視点でのターゲットの想像は、美容室の立地を選定する上では、まだ解像度が低い段階と言えるでしょう。
例えば、「お客様は24時間365日のうち、どんなタイミングで美容室を訪れるのか?」という点を想像しましょう。
美容室へのお客様の訪問タイミングは、概ね
- ①平日の仕事帰りや学校帰りに立ち寄る
- ②休日のスキマ時間で立ち寄る
- ③休日に特別なイベントとして訪問する
- ④平日の自由時間が多い、専業主婦・高齢女性
の4パターンに分類できます。
そしてこの時それぞれのお客様は、美容室の立地に関して
- ①のお客様は、「住居か通勤・通学先のエリア」にあること
- ②のお客様は、「休日に立ち寄るエリア」にあること
- ③のお客様は、「非日常感を感じられるエリア」にあること
を、特に重視することでしょう。
(平日の自由時間の多い人は、時間や距離以外の何かを優先するかもしれません)
このように考えれば、「生活スケジュールに組み込みやすい場所にある美容室」というものが、お客様にとって非常に重要な意味を持つことが実感できるはずです。
学生やOLをターゲットとした、日常生活に寄り添った自然体な美容室を目指すのであれば、帰宅時間や休日のショッピングの合間に立ち寄りやすい駅チカ物件のほうが都合がいいでしょう。
あるいは、客単価が高く、顧客満足度を徹底視したような、半日かけて体験するような高級サロンなのであれば、あえて山奥や海辺や都心高層部に店を構える可能性も十分に考えられます。
逆に、「お客様との密なコミュニケーション」や「徹底的にリラックスできる癒やし空間」といった普通ならプラスに働くコンセプトであっても、それが通勤通学の利用者が極めて多い駅前で出店した場合、
「忙しいのに会話が鬱陶しい」
「時間がないので十分楽しめない」
といったマイナスな印象を与える結果になるかもしれません。
(代わりに、「ヘアスタイルによる女性のエンパワメント」などをテーマとするサロンなら、立地とコンセプトに親和性が高いのではないでしょうか?)
ステップ2:出店エリアの仮説と検証
①仮説を立てる

顧客層が見えてきたら、それらターゲットがどこを拠点に生活しているかを想像し、
「この一帯に住んでいるはず」
「休日はこのあたりで遊んでいるはず」
というエリアを決めることになります。
どんな都道府県にも
- ビジネスエリアや大学があるエリア
- 休日にショッピングやランチを楽しむエリア
- 住宅街・居住エリア
といった区分け・ゾーニングが存在します。
それも、「若者中心」「高収入世帯」「新しい物好き」のように、家賃や治安の関係から「どういった人が住んでいるか」の傾向が存在します。
よってまずはネット検索や現地の散策などを経て、「このエリアに出店すれば、集客・リピーター確保に有利なのでは?」という出店エリアの候補をピックアップしましょう。
(こればっかりは土地勘や現地の雰囲気が重要なので、マニュアルめいた探索方法はほとんどありません。)
無論このままでは、単なる仮説や願望にすぎません。
実際に大金を払って出店する以上、すこしでも正確なデータを用いて「この立地なら行けそう!」という仮説を検証する必要があります。
② 検証1. 街を歩いてみる(一次調査)

- 駅前のチェーン店、雑誌のラインナップ、本屋、カフェの客層などから、街の属性がわかります
- 「自分の店のターゲットがここに住んでいそうか?」を肌感覚で掴む
- もっともシンプルにして重要な調査方法は、現地に足を運んでその現況を肌で感じて調査する方法です。
具体的に見るべきポイント
- そのエリアを出店候補地として選んだ理由となる施設(大学敷地やショッピング施設)
- 最寄り駅の駅前(どんなチェーン店が並ぶか)
- 不動産やの張り紙(その街に住む人のターゲットが想像しやすい)
- ネットの不動産情報サイト(空き物件の粗密から、住宅エリアの予想を立てやすい)
- 駅前の本屋(雑誌コーナーを筆頭に、そのまちの興味関心が如実に現れる)
- 集客阻害要素(イメージダウンな施設や、コンセプトの近い競合店)
- などを地図上にマッピングしておき、駅からの街並みを巡って見るだけでも大きな意
③ 検証2.ネットで調べる(二次調査)

instagram・tiktok・自社サイト・ オフィシャルLINEなどで最初から十分な集客を行える場合を除き、「ターゲット層」の自宅や職場などの生活圏に近いことは長期的な顧客を新しく獲得するのに非常に大切でしょう。
実際、現代人が新しい美容室を決めるときのフローを想像してみると、
- 「新生活に伴う引っ越し」
- →「〇〇駅 美容室」というフレーズで検索
- →「ネットの比較サイトで美容室検索」
- →「その中で条件にあう店舗を適当に選んでそのまま予約」
という流れが、非常に一般的な店選びの流れなのではないでしょうか。
このように考えた時、美容室はネット上での比較、とくに駅をキーワードとした検索で他の競合店と比較されることが多いことに気が付きます。
よって出店エリアを考える場合は、まずその「駅名 + 美容院」で検索し、競合店がどの程度存在するかを確認する必要があると言えるでしょう。
ツール名 | 内容 |
Google Map | Google Mapのマッピング・上位表示・価格帯・レビュー・件数から競合分析に活用 |
ホットペッパービューティ | 地域の美容室の価格帯・レビュー・件数から競合分析に活用 |
検索の結果、美容院が極端にすくなかったり、全く方向性の違う美容院しか並んでいない場合は、出店は慎重になったほうがいいでしょう。
逆に、類似のコンセプトや雰囲気を持つ競合店が多すぎる場合も、自分の運営方針に差別化する要素がきちんと存在しているかを確認し、場合によっては出店エリアをずらすことも検討が必要になるはずです。
④ 検証3. 商圏分析ツールの活用(無料OK)
こうした地道な分析と合わせて用いると非常に効果的な武器となるのが、政府が公表する人口統計のデータです。
ネット上には、あるエリアに対し
- どの土地に
- どんな属性の人が
- どのくらい住んでいるか
といったデータを分析することを、商圏分析といいます。
上述の仮説や現地を歩いた感覚を数値的に補強することができれば、これほど心強い武器はないでしょう。
商圏分析はビジネス向けの有償・高額ものも多数ありますが、ネットにさえ繋がっていれば誰でも扱える、無料のものを紹介します。
ツール名 | 内容 |
jSTAT MAP | e-Statの地図連携版。視覚的に統計データを確認可能 |
RESAS(地域経済分析) | 地域の美容室の価格帯・レビュー・件数から競合分析に活用可能 |
ステップ3.出店エリアと”勝ち筋”を考える
その「商圏(立地)」に合った「コンセプト」で勝ちにいく

「最寄駅×エリア種別(下記)」で、大まかな方向性は決められます。
エリア種別 | 特徴 | 向いているサロンタイプ |
---|---|---|
駅前 | 人通り多い、家賃高、競合多い | 回転率重視型、若者ターゲット、集客勝負型 |
住宅街 | 通りすがりは少ないが定着しやすい、家賃低め | リピーター重視、主婦層、1人サロン |
商業施設周辺 | 流動客あり、テナント費用は高め | ファミリー層、休日集客型、子連れOKなサロン |
隠れ家立地 | 家賃安、アクセスに一工夫必要 | 高単価・完全予約制・静けさ重視型サロン |
もちろん、これが全てではなく、コンセプトさえ作り込めば、それ以外の顧客も集客することが可能です。
成功事例① 駅前立地×回転効率重視型サロン

駅前立地を生かし、
- 設置した大型看板
- カジュアルで爽やかな内装(気軽に立ち寄れる雰囲気作り)
高回転率を目指し
- シャンプー台一体型スタイリングチェアを採用
- セット面数/坪数を最大化
- セット面は鏡を小さめに設計し、他のお客様の映り込みを回避
高単価メニューにも配慮した、
- 「安っぽくはならない」内装の作りこみ
成功事例② 隠れ家立地×完全予約制サロン

隠れ家立地を生かし、
- 予約制の完全プライベートサロン
- 家賃を抑えて、広々ゆったり空間をお客様に提供
完全予約制サロンにし、
- メニューは地域内高単価を設定
高単価メニューのため
- 「高級カフェを貸し切っている」ような内装の作り込み
「エリア」を先に決めて、それに合う美容室を考えるのもOK

この記事では①顧客を想定 ②エリアを分析、という順番での分析を紹介しました。
しかしやり方としては、まずエリアを定めてから
「ここに出店するとすれば、どんな経営方針、どんなコンセプト、どんな顧客層が考えられるだろう?」
と考える手法も、十分にありえる出店エリアの考え方と言えるでしょう。
例えば顧客のイメージをふくらませる方法として、いろんな街を散策しながら
「ここに美容室を構える事になったら、どんなお客さんをターゲットにして、どんな店にするのが最適だろう?」
と考えるという発想の広げ方は、土地を冷静に見つめ、自分本意なコンセプトやブランディングのまま店を構えてしまうことを防ぐ上で非常に大きな意味を持ちます。
そのため、場所を先に決めてから店の内容を想像するという考え方は、出店場所が決まっている人にも決まっていない人にもおすすめの、思考訓練と言えるでしょう。。
例えば駅から離れた立地の場合でも、
- 新規客のオフライン集客が不利
- 顧客の生活圏から遠くなりがち
といったデメリットを克服する何かがあれば、
- 家賃が安い
- 静かな店舗を実現しやすい
- 競合が生まれづらい
などのメリットを受けることができるでしょう。
「普通の美容室ならこういう物件が望ましい」
という常識にとらわれず、店や土地の持つ文脈を反映した集客をする思考を持つことで、より安く、より競合店のいない土地で、思いも寄らない顧客を確保できるチャンスにつながるのです。
まとめ

以上、美容室が出店エリアを決める上で必要となる基礎知識を紹介しました。
本記事の要約
- ターゲット層のイメージは「顧客の24時間365日のどこで訪問してもらうか?」を想像する
- 現地訪問や商圏分析ツールを駆使し、出店候補エリアの下調べをする。
- 先に場所を決めてしまい、「自分ならそこにどんな店を出すか?」と想像するのもアリ
出店するエリア・駅が決まったら、その範囲でさらに店を出したい場所を絞っていくことになります。
基本は駅前や駅チカ、目抜き通りと呼ばれる大通りかそこから一本外れた道路あたりが候補となるでしょう。
ここまで出店エリアの検討がつけば、あとは出店区域最寄り駅の不動産会社を訪ねて、実際に物件の紹介・内見をお願いする段階となります。
なお、上述の記事でも触れる通り、出店場所の決定においては内装の設計者や工事会社の立ち会いも必須です。
なぜなら物件選びでは、テナントの設備周りや構造上の特性を把握しておらず工事が進められなくなったり、法律や条例の事情から商業施設を出せないというケースもあるなど、さまざまなトラブルが発生しがちだからです。
美容室の大まかな出店エリアが決定したら、ぜひこのブログを運営する設計事務所studio.sumutoco(スタジオすむとこ)へ、ぜひお気軽にお問い合わせください。
設備・構造・法律上の問題点を指摘するのはもちろん、その土地やあなたのコンセプトに即した、あなただけの内装デザインを実現してみせます!
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