美容室開業|オープンまでのスケジュールとするべきことまとめ
いつか自分の美容室を開きたいなぁ。
でもオープンまでの段取りって、具体的に何を始めればいいのかしら?
ヘアスタイリングを職業とされているみなさまにとって、「独立開業」は最も大きな目標の一つと言えるでしょう。
しかしその具体的なプランや計画については、
- 店を構えたい大体の立地や客層をなんとなく考えている
- 依頼したい内装業者やHP業者を探している
- 資金融資の依頼先や、大まかな融資額の目安を調べている
- 事業計画書や開業1年間の収支スケジュールを組み立てている
といったように、人によって具体性が様々です。
では具体的に「開業にむけて動き始める」とは、どのような行為を指すのでしょうか?
あるいは店を構えるにあたって「もう引き返せない」といえるフェーズはどの段階なのでしょうか?
さらに言えば、資金やスケジュールの調整に苦労しやすく、開業が頓挫しがちなのはどのような場面でのことなのでしょうか?
というわけでこの記事では、開業を思い立ってから実際に店を構えるまでの手続きや申請のスケジュールの立て方について、
- STEP0:構想・情報収集
- STEP1:物件・融資の申請と諸契約
- STEP2:店作り
という3つのステップに分類し、そのポイントを解説したいと思います。
STEP1:構想・情報収集(数カ月〜数年)
さて、美容室の開業が美容師にとっての一つのゴールであるからと言って、今日今すぐこの場で不動産会社や金融機関に相談を持ちかける人はほとんどいないでしょう。
普通は(今あなたが行っているように)ネットや書籍・セミナーを通じて情報を収集するとともに、今修行中のサロンで働きながら先輩やオーナーの手腕を学んでいることかと思います。
場合によっては、この段階でお金・経営・内装・デザインの専門家に、無料相談などを持ちかけている方もいるかと思います。
いずれにせよ、このように開業とは思いついたその日にいきなりできるものではありません。
通常は開業の前段階として、
- 業界研究と事業計画書の作成
- 依頼業者(不動産・内装・HP制作・広告他)の調査・選定
- 金融機関や助成金の調査・選定
- 資金の調達やスキルアップ
といった、美容院開業にむけた一連の勉強や計画が必要となります。
独立は私にとって大きな目標!
もちろん普段から開業計画をちょっとずつ進めているわ!
……と言いつつ、ネットで「美容院 おしゃれ」「美容室 開業」みたいな
単語を検索しているだけだったりしない?
さて、このSTEPで重要となるのは、「夢をどれだけ具体的な計画に落とし込めるか?」という点に付きます。
まず一口に事業計画といっても、「ファイナンス面」「マーケティング面」「人事面」と多角的な側面からの計画が必要になりますが、当ブログを始め様々な指南書・ハウツーメディアが存在しており、情報収集には事欠きません。
また、仕事を依頼する業者の探し方・選び方についても、インターネットを通じて数多くの情報が溢れており、その気になれば一日中内装業者やWEB制作会社を探し続けることも可能といえるでしょう。
これは一見素晴らしいことのように思えますが、「夢や空想を永久に膨らまし続けられる」ということも意味しています。
あなたが業界に入って数ヶ月目の新米スタイリストであったり、開業資金がまださほど溜まっていない準備期間ならいざ知らず、本格的に独立を目指したいのであれば、「開業の資金とスケジュール」を明確な数字として設定することを、強く意識する必要があります。
じゃあ、その開業準備を「具体的に」すすめるためには、
何から手を付ければいいの?
そこでおすすめなのが、「融資を受けられるレベルの事業計画書を作成する」ことを目標とすることです。
例えば美容師の資金調達先として有名な「日本政策金融公庫」のHPにアクセスすれば、創業計画書(及びその記入例)のフォーマットを誰でもかんたんにダウンロードすることが可能です。
この記入フォーマットをきちんと埋めるためには、ある程度具体的な事前調査が必要となります。
あるいはこれに加えて、
- 美容室のコンセプト及び想定顧客層
- 売上・粗利・営業利益の年次シミュレーション
- 内装工事・デザイン会社・広告サイトなどの依頼先候補(相見積もり用にそれぞれ複数社)
といった項目を不動産会社や内装業者に依頼する際を想定して具体化すれば、より現実的でリアリティのある開業準備をすすめることが可能となるでしょう。
また、さらにプラスアルファで計画を進めたいのであれば、この段階で資金面と建築面の相談者を確保できれば更にベターと言えるでしょう。
STEP1の契約周りの諸業務のトラブルや思い違いを劇的に減らすことができるため、有利に計画をすすめることができるでしょう。
特に内装については、物件の契約までに一度専門業者に見てもらえるか否かで、後々の選択肢の広さが全く変わってきます。
開業が現実的になった段階で、可能な限り早めに「相談」できる専門家を確保するよう心がけましょう。
まだ、物件も資金の都合もついていない段階で、相談しても大丈夫なの?
もちろん!早めに専門家に相談した方が、美容室経営に有利なことに間違いないわ。
STEP2:物件・融資の申請と契約(2ヶ月〜6ヶ月)
事業計画を作成してみたら、思っていたよりも独立までの現実味が出てきたわ。
もし開業の準備や心づもりができたのなら、
具体的な行動、すなわち「物件・融資」などの選定・申し込みに移りましょう。
さて、前項でお伝えした事業計画を十分練ることができ、かつスキル面・資金面でも独立に十分な準備ができた場合、いよいよ開業に向けた具体的な行動、すなわち
- 内装業者への相談
- 物件探しと審査、および契約
- 融資の申請と審査、及び契約
- その他各種契約(インフラ・内装・デザイン・広告他)
に取り組む必要があります。
実はこのフェーズこそ、美容室開業を阻む第一の難所とも言うべきSTEPと言えるでしょう。
まず、内装業者の選定とイメージの共有は、想像以上に大変な作業です。
もちろん相手の内装デザイナーや施工業者は、お客様のイメージを汲み取るプロではあります。
しかしそのイメージを伝えるお客様(つまりあなた)は、脳内に浮かんでいる内装のイメージを説明するプロではありません。
例えば「カフェ風」といった時、昔ながらの昭和な喫茶店を思い浮かべる人もいれば、今風に洗練されたスターバックスをイメージする人もいるはずです。
こうした「理想の内装」伝え、しかもそれを限られた予算やスケジュールの中で実現できる形に落とし込む作業は、非常に時間のかかる作業となるのです。
次に、物件探しが一筋縄では行きません。
店舗物件の選定は、一般の引っ越しに比べてオーナーや管理会社との交渉(家賃はもちろん、現状復帰や設備面での取り決め、賃貸か売買かの希望、内装工事の騒音、契約時期など)が難しいものになりやすく、魅力的な物件があったとしてもスムーズに契約できないケースが非常に多いからです。
また、融資の面も予定通りに行かないのが一般的です。
金融機関の融資は、あなたの現在の所属や諸資産、事業計画の妥当性、時代や地域性や業界の動向に左右されやすく、ネットや書籍や他人の体験談が当てになりにくいことから、想定していた金額をもらえないケースが非常に多いことは、十分に把握しておく必要があるでしょう。
合わせて助成金についても、物件や事業内容での条件や成約が複雑なため、直前になって認可されない・対象外であることが判明するケース散見されます。
せっかく不動産物件が決まりそうだったのに、当てにしていた開業資金を十分に調達できず、店探しを一から再開しなければならない可能性も十分にありえると言えるでしょう。
物件探しや融資をスムーズに進める方法はなにかないの?
こればっかりは、個人の努力ではどうにもならない面も大きいわ。
諦めずに申請し続けるような、長期戦への覚悟が必要よ。
このフェーズについては、事前の準備や計画以上に、粘り強さや諦めない心、そして余裕のあるスケジュールが重要となってきます。
例えば「今の勤め先を退職済みで、無収入の状態で物件選びを進めるケース」など、資金や日程に余裕がないまま開業を進めることになると、こうした「審査がおりない」自体が続くと焦りが生じ、望まない形での開業を迫られる結果に陥りがちとなってしまいます。
また、1回や2回くらい申請が通らなかったからと言って諦めるのも懸命とは言えません。
いまの環境でさらにスキルや資金をためつつ、数カ月からときには数年かけて店を探すくらいの心づもりで取り組むことが、ここでは非常に重要になってくるのです。
STEP3:お店作り(2〜4ヶ月)
ようやく、お店づくりの始まりね!
設計・工事・搬入で起こりがちなトラブルは、なんと行っても「予定の後ろ倒し」ね。
一つの工程の遅れが、どんどん後ろに影響を及ぼすのが特徴よ。
物件の契約も済んだ、資金も予定通り確保できた。
ここまでくれば、いよいよ具体的な「店作り」を行う段階です。
逆に言えば、もしこのSTEPまで進んでしまった場合、もう後に引くことはできません。
泣いても笑っても開業する以外の選択肢は消滅しました。
まずは粛々と金融機関や不動産会社との契約を進めつつ、
- 内装業者
- インフラ(水道・電気・ガス・ネット他)の管理業者
- HP業者・デザイン業者・広告代理店
- その他行政手続き
へのオン核的な相談・依頼・契約に取り掛かりましょう。
また、その中でも特にトラブルが発生しやすく、また時間もお金もかかるのが
- 図面通りに施工されていない
- 内装設備が想定以上に旧式のものだった
- 依頼していた建材が到着しない
- 隣接するテナントから騒音のクレームがきた
- 漏水や火災が発生し、オーナーから退去を命じられた
といった、内装・設備・施工面でのトラブルです。
こうしたトラブルの可能性を可能な限り排除するのが良き内装業者ではありますし、事前の計画や綿密な打ち合わせである程度は不足の自体を未然に防げるものですが、それでも何らかの問題が発生することを0にするは不可能です。
その場合、たとえあなたに非がない事件・事故であったとしても、想定していない出費や遅延が発生する可能性も十分に考慮しなければなりません。
すでに「開業日」を告知申請してしまっている以上、工事が遅れたからと言って安易に開業日を遅らせるわけには行きません。
なぜなら開業が決定したあとは、
- ホームページやフライヤー・名刺・ポスターなどの販促物のデザイン依頼
- オープニングスタッフの採用
- 保健所・税務署・消防署の確認・検査・申請手続き
といった業務も並行して行っており、すでに多くの人に開業日を連絡してしまっているからです。
もしこの状況で開業日が遅れた場合、開業初日の顧客を逃しかねないばかりか、制作した配布物の再制作や申請のし直しが必要になったり、場合によっては開業していないのに賃料や人件費を支払う必要が出てきてしまいます。
こういった事態を回避するためには、
- 発生しうるトラブルのパターンを可能な限り知っておき、設計者・施工者と綿密に打ち合わせをしておく
- ある程度トラブルが発生してもいいように、予算とスケジュールに余裕を持たせておく
といった方法で、可能な限り対策を取るしかありません。
お金の面でも時間の面でも、ゆとりのある計画が重要っていうことだね。
まとめ
以上、美容室の開業に向けた流れを大雑把に3つのステップで紹介いたしました。
本記事の要約
- 美容室の開業は、物件契約前、物件契約&融資申請、物件契約後の3つで考える
- 普段から、事業計画書を常に作成し、開業計画や経営戦略を具体的に検討しておく
- 開業作業の中では、内装工事関係が最もトラブルになりやすくかつ時間もお金も想定外にかかりやすい。
ちなみに、具体的に業者に何かを相談する際は、金融・不動産・デザイン・内装など様々な業者のうち、まず内装デザイン業者に声をかけるところから始めるのをおすすめします。
理由としては、
- 開業費用のうち、もっとも初期費用占める割合が多く、内装の方針がその後の動きに大きく影響するから
- 不動産の物件探しは、内装業者立ち会いの調査が必要があるから
- 内装デザインのイメージがすでに固まっていると、その他フライヤーや名刺のデザイン依頼もスムーズだから
の3点が挙げられます。
そして、このブログを運営する設計事務所studio.sumutoco(スタジオすむとこ)もまた、美容室をはじめとする内装設備のプロフェッショナル。
もし美容室の開業でお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。